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今年はあまり映画館へ映画を観に行けなかった。ただこればかりは観ておかなければならないと思っていたのがこの『サウダーヂ』だ。ずいぶん前から公開していたようなのだけれど、ようやく今日、いやもう昨日か、渋谷シネマライズにて観ることができた。
富田克也監督/空族制作の前作『国道20号線』を、僕は幸い昨年長野の山奥で開かれた「なんとかフェス」という野外フェスにおいて、そそり立つ巨岩を背景にした何とも非現実的なセッティングで観ることができていたのだけれど、それは地方都市のどん詰まり感をニヒリスティックなまでに乾いたユーモアを交えながら描き鑑賞後にはズッシリと残る優れた作品であった。この『サウダーヂ』も同じく監督の出身地である甲府を舞台に展開するが、その射程は前作をはるかにしのぐ広がりを見せており、なおかつ富田監督は交錯し、すれ違う様々な人々の視点を極めて冷静に捌いてる。
「サウダーヂ」とはあえて和訳すれば「郷愁」となるが、日本語における「もののあはれ」のように、ブラジル人たちにとってはある種の特別なニュアンスをたたえる言葉であるらしい。
産業の衰退する街に生きる、孫請けの地元の土方、仕事にありつけない日系ブラジル人、フィリピンパブで働くタイ人ホステス、クラブに集まる若者たちのこの群像劇では、どうしようもない現実のなかでほとんど誰もが自分が本来いるべき場所から離れて生きていると感じ、それぞれが時にはまだ見たこともないようなその懐かしい「ココデハナイドコカ」を夢見ている。しかし彼らの「郷愁」は決して重なり合うことのないまま、焦燥や虚無感、あるいは憤懣や鬱屈ばかりが積もっていく。
この映画に関してはすでに色々な人が色々なことを言っているようだし、それに僕が付け加えられることも特にないのだけれど、「酩酊せずにはやってられない」という感覚、そう言ったのは宮台真司だったか、とにかくそうした感覚は、自分の地元の状況を顧みても嫌なぐらいのリアリティーをもって共有できるものであった。
間違いなく傑作!
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