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『黒船』
サディスティック・ミカ・バンド
先日、とある目的のためレンタカーを借りて宇都宮まで行った。言うまでもなくお気に入りのCDをしこたま持っていったのだが、最もヤラレタのは帰路に繰り返し聴いたこのアルバムであった。
日本ポピュラー音楽史に燦然と君臨する名盤であり、「タイムマシンにお願い」が日本のロックが誇るアンセムの一つであることに異議を申したてる人はいないだろう。しかしこの度新たに僕が気に入ったのは、このアルバムのロックとしての魅力よりも黒人音楽、つまりファンクへの傾倒ぶりだ。それはインストゥルメンタルの「何かが海をやってくる」や「黒船(嘉永6年6月3日)」を聴けば明らかであるし、リズム隊、特にドラムのファンキーさといったらかなりのものだ。「塀までひとっとび」ではスライばりに攻撃的なファンクを聴かせてくれる。
日本で、日本語で、ロックをやるということ。それが1975年当時ではどのような意味を持っていたのだろうか。21世紀に若者として生きる僕にそれは知りようもないが、歌詞以外にも「日本らしさ」をどう表現するかという問題に行き着くのは想像に難くない。そこで彼らが音だけで「ブラックネス」を端的に表すことのできるファンクに目をつけたというのは興味深い現象だ。もちろんそれが当時の流行であったのかもしれないが。チンドン的で滑稽な「どんたく」は楽天的な江戸趣味を取り入れることで何とかファンクを日本風に改ざんしようとする試みなのではないか。ファンクとは離れるが抒情的な「四季頌歌」のセンチメンタリズムは何とも日本らしい。
つまり何が言いたいのかというと、これが世界に誇れる「日本の」音楽だということ。
サディスティック・ミカ・バンド - 塀までひとっとび
http://www.youtube.com/watch?v=vwfxongUQfk
直接貼ることができないようなのでひとまずリンクだけ貼っておく。
Sion
街はクリスマス気分
あちこちから思い出したようにジョンの声
そして俺ときたらいつもこのごろになると
なにかやり残したよなやわらかな後悔をする
(「12月」より)
シオンのこの2ndアルバムは1987年、つまり僕の生まれる前年にリリースされたものである。自分よりも2回りも上の世代になるわけだが、このアルバムに詰まった少々照れくさい反抗心とセンチメンタリズムは、20年後の若者である僕にも大いに共有しえるものだ。
タイトルトラックの「春夏秋冬」はもちろん泉谷しげるの名曲のカバーである。ここでは原曲にある「汚いところですが、暇があったら寄って下さい/ほんのついででいいんです、一度寄ってみて下さい」という一節がカットされている。原曲は諦観溢れる辛気臭いフォークであるが(もちろんそれはそれで素晴らしいのだけど)、シオンの「春夏秋冬」は諦めつつも確実に前を向いている。そこにはギラギラした何かがあるのだ。それはパンク以降の精神性なのかもしれないが、とにかく「春夏秋冬」という曲に新たな価値を与えるのに成功している。きつい時、本当にこの曲には助けられた。
邦楽には決して聡くない僕であるが、なんの因果かCDレビュー第一弾は日本人アーティストとなった。しかしながら、やはり言葉がわかるというのはいいものだ。こういった骨のある日本の音楽に出会うと、本当に嬉しくなる。
Sion - 春夏秋冬
アウトプットもたまにはね