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チアン・ウェン監督
いやーこれは凄い。太平洋・大東亜戦争末期を扱った2000年発表の中国映画であるが、よくある反日映画などとはまったく次元が異なる傑作だ。
とある農村に謎の男が現れ、マーという村人を脅し、麻袋にくるんだ日本兵と中国人通訳の二人を残していく。仕様がないので二人を保護し、拘束しながらも世話をするが、約束の期日になっても男はやってこない。結局半年もの間、わけも分からずこの二人を抱え込むことになる。その間の日本兵・通訳とマーとの交流や、村人の葛藤をコメディーも多分に交えながら描いたのが前半だ。死のうとして必死にマーを侮辱する日本兵の言葉を通訳がまったく反対に訳すところなどはなかなか笑える。侮辱だと思って教えてもらった中国語の「お父さんお母さん新年明けましておめでとうございます」を凄んで叫ぶシーンは秀逸である。リウ老子という刀剣使いのじいちゃんもかなり馬鹿でいい。タイトルの言葉は彼によるものである。
日本兵は次第に世話を受けたことに恩義を感じだし、礼に穀物2台分をやるといって解放してもらうのだが、本部に向かったところで酒塚猪吉隊長が登場する。澤田謙也という役者さんなのだそうだが、この人がちびりそうなくらい凄い迫力で、まさしくこれぞ帝国軍人といった感じである。これ以降の後半は雰囲気がガラリと変わる。酒塚隊長は生きて戻ってきた兵士をリンチするも、「皇軍は信頼を重んず」と彼が交わした契約を守って村に穀物を運ぶ。そして物語は悲劇的に進んでいく。村の虐殺が始まる際の狂気の緊迫感は見ものだ。「みんながやるなら俺も!」という日本人の気質がよく出ている。そもそもあんなおっかない上官がいれば逆らえる人などいないだろうが。バックの軍艦マーチが不気味に耳に残る。
日本人の描写がフェアでないという批判もあるそうだが、僕はそうは感じなかったな。馬鹿で野蛮な日本人は今だってそこいらにゴロゴロいるし、そんな奴が占領軍という絶対的な支配力を持てば、ああいう振る舞いもまったく不自然でないと思う。もちろん中国人は日本兵に媚びへつらってへこへこしている。死にたくないからそりゃ当然だ! この辺はかなり脚本がしっかりしていると思った。
この映画はカンヌでグランプリを獲得したが、中国では発禁をくらっているという。観るべきと言う価値のある作品である。
アウトプットもたまにはね