咳をしても一人 微睡のメロディー 忍者ブログ
孤独な趣味の世界
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Caetano Veloso『Livro』 1997年


 曙光が窓をほのかに染める朝のまだごく早い時間、ふと目が覚める。眠気のうちにまどろんでいると、頭の中にある一つのメロディーが流れ込んでくる。ちょっと逡巡したあとに意を決して身体を起こし、寝ぼけまなこでその曲の入ったCDを探し出し、再生装置にセットする。あとは心地よい音楽に包まれて、再び眠りに落ちてしまうのもいいだろう。でもこうして、久しぶりに聴いたそのアルバムの変わらない素晴らしさにすっかり感動してしまって、たまらずに文章をしたためるのもいい。



 一艘のカヌーがツイツイ
 北から南へ 朝を横切る
 舳先では伝説の女神が
 松明を掲げる
 世界中の男たちが
 その方角へ視線を向けた
 風の味が歌う
 愛しい娘の名をガラスに響かせながら
 ―Manhatã [Para Lulu Santos]


 経験上、なんて大げさに言うのも変だけれど、朝のフラットな感覚が選ぶのは文句の付けようのない名曲・名盤であることがほとんどだ。そうは言っても、それでもなお、なんと美しい音楽、それに美しい歌詞だろう。上にあげたのは國安真奈さんによる素晴らしい対訳の1番の抜粋で、それに続く「マニャタン」と繰り返すサビのメロディーが今朝僕の頭を捉えて離さなかった張本人だ。この曲自体はアルバムの中ではそう目立たなく地味な佳作といったポジションなんだけど、ふとした時に急に聴きたくなるのは、不思議といつもそういう曲な気がする。
 この『書物』と題されたカエターノ・ヴェローゾのアルバムは、その長いキャリアのなかでも傑作の一つとして挙げられることも多いようだ。躍動するサンバのリズムに、豊饒なストリングス(チェロが素晴らしい!)、ツボを押さえたホーンアレンジの妙技、それらの間を掻き分ける歪んだギターの音、そして理知的なカエターノの歌、と、ポイントを挙げてみるならばこんなところだろうか。
 ぼくがこの作品を買ったのはたしか中学生の時のことだったはずだ。もちろん当時の僕にこの良さが理解できたのかどうかは怪しいものだが、その後もずっと手放さず、数か月ごとに引っ張り出しては聴いている。それほど気に入っているはずなのに、実は、いつもついつい後回しにしてしまってカエターノの他の作品は一つも聴いたことはない。このカエターノに限らず、2007年の来日前後にマリーザ・モンチに熱を上げたのを唯一の例外として、ぼくはMPBもといブラジル音楽とはずっと一定の、それもいくぶん遠めの距離を保っているようだ。これを機に、近いうち一歩踏み出してこの距離を少し縮めるとしよう。その際手掛かりとするべきは、やはり「粋な男」カエターノにほかならないだろう。
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