咳をしても一人 2010年を振り返る・前篇 忍者ブログ
孤独な趣味の世界
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 もう1月もすでに終わり、まあ年越しを挟んで旅に出ていたにしてもすでに帰国してから2週間たってるし今さらという感がありありとしているのだけど、どうせ読者の極端に少ない個人のレビューブログなんだから別にかまわないだろうということで鮮やかに無視して、ここらで昨年の僕と音楽の関係を振り返ってみよう。
Darwin's Theory - Darwin's Theory 2010年という年は、僕のなかではレアグルーブに本格的にのめり込みだした年として特徴づけられるかもしれない。それはおそらく、その過去の優れた音楽を掘り起こす温故知新の精神が手放さないアナログへの執着が、夏が始まるころに、僕が一人暮らしを始めるときに兄から譲り受け、合計すると7年の長きにわたって酷使され続けたCDプレーヤーがおシャカになったという個人的な事情とマッチしたということもあるのかもしれない。そういうわけで、昨年一番繰り返し聴いたアルバムは、この『ダーウィンズ・セオリー』で間違いないだろう。非常にのんびりとしたペースでいつも優れた再発を提供してくれるアメリカのロータス・ランドが満を持して発表した本作は、78年にダーウィン・ジョーンズという人物を中心にスライ・ストーンのプライベート・スタジオにて録音されたまま世に出ることなく眠っていた珠玉の音源をコンパイルしたものなのだか、低音がやけに強調された店頭の視聴機で"Keep on Smiling"のウネり跳ねるベースと喜びに満ちたコーラスを初めて耳にしたとき、僕はその場で膝から崩れ落ち感涙にむせび泣き始めるのを紙一重でなんとかこらえ、そのまま勇み足でレジへと向かったのだった。この他にもザ・ジョン・ダンサー・オクテット『ザ・ダンサーズ・インフェルノ』、マシュー・ラーキン・カッセルのコンプリート盤、ザ・ブリーフ・エンカウンターのセルフタイトル・アルバムなど、素晴らしい作品が目白押しであった。
 しかし、こうした過去の幻の音源たちを、いくらそれが数十年の時を経て再び、あるいは初めて巷間に問われたからといって、「2010年の音」として取り上げるのは、やはりいくらかつらいところがある。ならばリイシューではなく、新たに制作され発表された新譜のみを見た場合どうかというと、僕自身決して熱心なリスナーではなかったためこう言うのは少々はばかられるのだが、特にこれといった作品もなく、なんともぱっとしない一年だったという印象である。
Sade - Soldier of Love 特にガッカリしたのはシャーデーの10年ぶりの新作『ソルジャー・オブ・ラヴ』。その落胆は先行シングルでタイトルトラックの"Soldier of Love"に多くを負うのだけど、それというのも、前作『ラヴァーズ・ロック』で頭にガツンと一撃くらって以来シャーデーのディスコグラフィーを網羅しその音楽を聴き続けた者としては、いくらなんでも流行に迎合しすぎだという気がしたし、相変わらずシャーデー・アデュが素晴らしい歌声と美貌を保っているのはわかったにしても、51歳にもなってミリタリー・ダンスを披露しジャケットでは大胆に背中を露わにする姿(18年前の『ラヴ・デラックス』におけるヌードとはまったく意味が異なるというものだろう)に痛々しさを感じずにはいられなかったのだ。アシッド・ジャズというかつての流行の最先端からキャリアをスタートさせたシャーデーは、リSade - Lovers Rockリースの周期が長くなるにつけ時代を超越した孤高のバンドとでもいった趣きを帯びるようになっていったが、下世話な話、存在が大きくなるほどマーケットを無視できなくなるという側面はあるのだろう。前作の成功も、その裏にソウルクエリアンズらの活躍に代表されるようなネオ・ソウルの見直しという大きな流れがあってのことであろうし、そう考えるとジャンルの垣根がいっそう低くなりR&Bにおいてもエレクトロ旋風が巻き起こった2010年というのは、彼らにとって決して良いタイミングではなかったのではという思いがしてくるのだ。実際に今作を改めて聴いてみるとそれほど悪くはないのだが、前2作の名盤に比べるとどうしても緊張感に欠けてしまうし、1曲たりとも、"Kiss of Life"や"By Your Side"に匹敵するようなものはない。前年の2009年にマクスウェルがシャーデー・サウンドのキー・メイカーであるステュアート・マシューマンから離れてあれだけ優れたアルバムを出していただけに、いっそう残念に感じてしまうシャーデーの新作なのであった。
e97a200e.jpg シャーデーのこととなるとつい饒舌になってしまうが、昨年は他にもドゥウェレやビラルなど僕が日頃から追いかけているネオソウル周辺のリリースはあったが(どちらも決して悪くはないが特別良くもなかった)、2010年ベスト・アルバムを決めるならば毎回間違いないブツをリリースしてくれるストーンズ・スロウから出たアロー・ブラックの『グッド・シングズ』になるだろう。先行シングル"I Need A Dollar"の堂々たる態度も良かったし、オーセンティックなソウル・マナーを披露したかと思えばヴェルヴェッツのカバーなんて意外な飛び道具使ってきたりと、非常に楽しめるアルバムである。近年の正統派ソウルとしてはアンソニー・ハミルトンの2ndアルバムと並ぶといっても過言ではない、かも。
 ベスト・シングルとしては、上のアロー・ブラックと迷うところだけど、ジミ・テナー&トニー・アレンの"Selfish Gene"を選びたい。旅のあいだも、ネットカフェに入ってはよくYoutubeでこの曲を聴いたものだったから。

Jimi Tenor & Tony Allen - Selfish Gene
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無題
後編モトム
○ックリ 2011/02/22 23:27 編集
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